アンティノーリによる「歴史を造った」超有名銘柄。1980年代以降、世界を席巻したトスカーナ産超高級ワイン(人よんで「スーパー・タスカン」)の源流となった革新的存在です。ワイン好きなら、一度は飲んでおくべき永遠の定番のひとつに数えられるでしょう。
1970年代初頭、イタリアワインの世界は深刻な品質低迷と需要減にあえいでいました。昔ながらの土着品種は人気がなく、伝統的な醸造法は古臭い味わいしか生み出せず、という八方塞がりの状況だったのです。これを打開すべく動いたのが、イタリア・トスカーナ州を代表する名門ワイナリー、アンティノーリでした。フィレンツェの町中にある豪華な宮殿を本拠地とするこの造り手は、一貫して進取の精神を持ち、20世紀イタリアワインの近代化を常にリードしてきました。
1970年代にアンティノーリで醸造責任者を務めていた伝説的人物、ジャコモ・タキスは、トスカーナ州の土着品種であるサンジョヴェーゼを主体にしつつ、そこにフランス・ボルドー地方の最高品種、カベルネ・ソーヴィニョンをブレンドした実験的ワインを生み出しました。できあがったワインの熟成に用いられたのは、イタリアで伝統的に使われてきた大樽ではなく、フランス産の小樽です。モダンでクリーンな味わいを持つこの新しいワインは、ブドウ畑の名を取って「ティニャネッロ」と名づけられました。誕生の時点で、イタリアで最も高品質なワインのひとつとなったティニャネッロですが、当初は同国のワイン法上で最も低い格付けにあたる、「ヴィーノ・ダ・ターヴォラ」としてしか販売できませんでした。その頃のイタリアでは、フランス品種の使用やフランス流の醸造法が、高級ワインの法律で認められていなかったためです。しかしながら、ワイン愛好家たちは名よりも実を取りました。ティニャネッロは瞬く間に世界中で喝采を浴びるようになり、イタリアワイン全体が、その後を追うようになったのです。
2004年ヴィンテージの品種構成は、サンジョヴェーゼ85%、カベルネ・ソーヴィニョン10%、カベルネ・フラン5%。今飲み頃を迎え始めた2004年は、2000年代のトスカーナで最高のヴィンテージのひとつです。ロバート・パーカー93点。